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2025.05.10
見過ごせないダブルケア問題-支えるため企業ができること

「子育て」と「介護」の両方を同時に担う「ダブルケア」の増加が予測されています。
え、まさか?と思われますか?
でも、これは一部の特殊なケースではなく、晩婚化と高齢化の進行により、今や誰にとっても起こりうる現実となっています。
これは企業にとっても、無視できない問題と言えます。
なぜなら、こうした過重な家庭責任が、離職や生産性低下、メンタル不調の温床になり得るからです。
しかし、視点を変えてみてください。
もし企業側が「両立支援」に本気で取り組み、具体的な制度や配慮を整えたとしたらどうでしょうか…?
社員の働きやすさが向上するのはもちろんのこと、人材定着や企業イメージの向上、さらには採用競争力の強化にもつながる可能性があります。
この記事では、いま注目される「ダブルケア」について、その現状と課題、そして企業が果たすべき役割についてご紹介します。今後の福利厚生戦略の参考としてお役立てください。
Q1. 「ダブルケア」とは具体的にどのような状況を指すのですか?

A.
「ダブルケア」とは、子育てと介護を同時に担う状態を指します。
たとえば、未就学児の送り迎えと認知症の親の介助を同じ日に行うといったケースです。
この状況は、晩婚化や出産年齢の上昇、親世代の長寿化といった社会的背景から、近年ますます一般化してきています。
平成28年3月に公表された内閣府の調査によると、未就学児の育児と介護を同時に行っているダブルケアラーは約25万人と言われ、 特に30代後半から40代の働き盛り世代に多くなっています。
この年代は労働力の中核を担う層で、企業にとって見逃せないポイントです。
Q2. ダブルケアが社員に与える影響には、どのようなものがありますか?
A.
最も大きいのは、時間的・精神的な余裕の喪失です。
家庭内の複数のケア責任により、睡眠時間や自己管理の時間が削られ、心身の疲弊が蓄積しやすくなります。

この状態が長く続くと、
- 欠勤や遅刻・早退の増加
- 生産性の低下
- メンタルヘルス不調
- 離職やキャリア中断
と言ったリスクが高まります。
特に、周囲の理解が得られない環境では、社員本人が制度利用をためらう傾向にあり、支援が届かないケースも少なくありません。
Q3. 社会全体ではどのような支援制度が用意されていますか?
A.
日本には、以下のような公的制度が整備されています。
介護保険制度(2000年施行)
地域包括支援センターやケアマネジャーが、在宅介護サービスや施設利用などをサポートする仕組みです。

育児・介護休業法
従業員の仕事と家庭責任の両立を支える法律で、代表的な制度には以下が含まれます。
育児・介護休業法とは
育児や介護と仕事を両立しやすくするための法律です。
内容は少し細かいですが、大事なポイントだけピックアップすると…
- 育児休業:最長で子が2歳まで取得可能
- 産後パパ育休:生後8週間以内に父親が取得できる新しい制度
- 子の看護休暇:病気の子を看病するための休み(年間5日、2人以上なら10日)
- 介護休業:家族1人あたり最大93日まで(3回に分けて取得OK)
- 介護休暇:年5日、対象家族が複数なら年10日まで
2025年には法改正も予定されており、「両立支援制度の個別周知・意向確認」「テレワークの努力義務化」「短時間勤務の代替措置としてのテレワーク」など、企業の取り組みが一層求められます。
Q4. 企業としてどのような対応が可能ですか?
A.
制度の整備だけでなく、実際に利用しやすい風土作りが鍵となります。以下のような具体策が有効です。
- テレワークや短時間勤務の柔軟な導入
- 育児・介護休業取得の積極的推奨
- 福利厚生としての家事代行・ベビーシッター・介護サービス補助の導入
- 上司や同僚へのダブルケア研修など、社内理解の促進
特に、管理職が制度の主旨を理解し、部下と対話できる環境を作ることは、実効性のある支援の前提となります。

Q5. 制度を活用してもらうには、どのような工夫が必要ですか?
A.
最大のポイントは、「相談のハードルを下げること」です。多くの社員は、制度が存在することは知っていても、自分が利用してよいのか分からないという迷いを抱えています。
そのためにできること
- 制度の具体的な事例紹介(利用した社員の声など)
- 社内向けの情報発信の見直し(社内イントラ、ポータルの利用)
- 両立支援に特化した相談窓口の設置
また、ケアマネジャーや地域包括支援センターとの外部連携を社内に紹介するなど、社内外のリソースを橋渡しする仕組みも効果的です。
Q6. 企業がダブルケア支援に取り組む意義とは?
A.
少子高齢化の進行=労働人口の縮小と同義と言えます。
そんな中、ダブルケア世代の就業継続を支えることは、企業にとって人材の維持と活用という観点からも極めて戦略的な施策です。
同時に、「社員の人生に寄り添う企業」であるという姿勢は、社外からの評価にもつながります。実際、福利厚生の充実は企業選びの基準として年々重視される傾向にあります。

制度は「あること」より「使えること」が重要です
ダブルケアを行っている人、ダブルケアラーが経験している現実は、甘いものではありません。
それを支えるためにどれほど制度を整えても、社員が使えない/使いにくい環境では意味がありません。
企業が本気で「仕事と家庭の両立」を支援することで、社員は安心して働き続けることができます。
「子育てと介護の両立」は、今や例外ではありません。
社内のダブルケアラーのために、御社はどんな支援を用意していますか?
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